《おどりのもり》でお世話になったイエローハウス。
今年の夏でばいばいすること(立ち退き)になったそうです。
そこで、8月7日に、イエローハウスと同じ色の、黄色の服やおもちゃ、小物を持ち寄って、最後の思い出を作りました。
☆ワークショップじかんわり☆ 14:30-15:00 ダンス 15:15-16:15 きいろいクレヨンづくり 16:30-17:00 音あつめ 17:00- ミニパーティー
以下、内容をレポートします。
14:30-15:00 ダンス
今回やってみたのは、「アンチ・ジェスチャーゲーム」。
キーワードを思い浮かべて、それを体の動きで表現し、別のひとがキーワードを知らされることなく動きだけ教わって、どんどんアレンジしてその動きを繰り返す、というダンス・ゲーム。まいまいが様々なリズムを叩いて、踊りを刺激してくれ、その踊りを見てなにに見えたか、どんな言葉が浮かんだかを、共有した。
一般的に言って、コンテンポラリー・ダンスは、見るのもやるのも難しいと感じたり、抵抗感が湧いたりすることが多くある。このゲームの狙いは、それを解消することにあり、⑴踊ることと踊りを見ることの敷居を低くすること、そして⑵即興で踊ることのトレーニングと踊りを鑑賞する眼を養うこと、この両者を両立するワークとして考案した。
実際にやってみると、「月」「植物の葉」「ひょうたん」というように違うものを思い浮かべていても、そのイメージに「宙に浮いている感じ」「曲線」「軽さ」などの特徴が共通していた。
こうやって、具体的な物のイメージと、それらに共通する抽象的な特徴の、2種類の言葉が浮かんでくることが魅力的だと思い、うまくいきそうな感触があったのでこれからも続けていこうと思うし、これまで数回企画してきた「ワンシーン」(絵本を読んで、その一場面を踊り・音楽・言葉で再表現してみるワークショップ)にも活かしたい。
15:15-16:15 きいろいクレヨンづくり
"イエローハウスをみんなの記憶に分けて残そう〈分霊〉"というコンセプトを元に、外壁の「きいろ」い色をクレヨンにして持ち帰るという活動をした。
長年雨風にさらされた壁の、様々な「きいろ」: 黒ずんだ色、白っぽい色、苔の緑がかった色等を発見する楽しみと、その絶妙な色あいを顔料を混合わせることで再現するわくわく感を味わうことを通して、からだの感覚とイエローハウス存在感をより深く結びつけようと思った。
様々な色あいの「きいろ」いクレヨンができた他、壁に貼ってあるタイルの青緑や紫色を発見した子どもたちがいて、予想外で面白かった。選んだ色を再現できているかを参加者が自主的に確かめに行っていたのもよかった。アルミフォイルを用いた型づくりは幼い子どもはフォローが必要だったが、発想のバリエーションは増えてよかったと思う。
16:30-17:00 音あつめ
イエローハウスの音を集めた。
まずは、その日のイエローハウス自体やそこにある様々なモノ・素材から、自分の好きな音や面白いと思う音を見つけて、録音した。録音してから それらを互いに聴きあったり、最後にはみんなで円になって座り、自分のとっておきの音を披露し、それが何に聞こえたか、またその音は実際どのようにして生まれたのかを再現したりして楽しんだ。
また、参加者が面白い"マイク"(カラオケができるおもちゃ)を持って来ていたので それを借りて、ひとりずつ自分なりに音を作り(マイクを手で叩いたり、息を吹きかけたり)、リレーのバトンのように回していくということをやってみた。それも録音し、みんなで聴いた。
このワークの前にダンスやクレヨンづくりを行い、みんな楽しくて はしゃいでいたのだが、"音集め"の時間になると静かに集中していたのが印象的だった。
録音をするという作業がより集中力を高めたのかもしれない。(当初は録音するのは私がして、と思っていたが、こどもたちはスマートフォンを使うことに慣れていて、親御さんのものを使って自ら録音していた。その様子を見て、録音するという作業自体にも興味があることに気づいた)
また、自ら録った音にタイトルをつけて保存をしている子がいたのも素晴らしいと思った。
小さな子は、録音に使っていたスマートフォン自体や録れたものを"再生すること"に夢中になっていたが、周りの様子を見てなんとなく音をつくることにも挑戦しようとする姿が見られたり、録音に入っている自分の声に反応したりしていた。
録音で自分の声が自分じゃないように聞こえるのと同じように、音だけ聴くと本当に何の音だか分からず、勝手に連想したりするのが面白いと感じた。
ルーパーやマイクなどの機材を利用し、録った音をその場で早速重ねて音楽に出来たら楽しかったなあと思った。
17:00- ミニパーティー
開催者のコメント
>いくみ
イエローハウスは使う人によって様々な表情を見せる。室内だけでは収まらないエネルギーは黄色い壁から外へと出て行き、通りすがる人にもほんのちょっとだけ非日常的な驚きや感覚を気づかせる。〈おどりのもり〉にとっては、来る人を包み込む暖かい大きな"からだ"のようだったようにも思う。外の喧騒から守られているような安心感がいつもあった。一方でドアを解放することで外に開かれている意識もあり、閉塞感を感じることは少なかった。そのような意味でも他にあまりない空間だったと思う。
イエローハウスでの小規模でありながら密度の濃い実験と人々の関わり合いは、今後の活動の場を選ぶ際にも参考になると思う。
日本橋に暮らす人々との繋がりも、ぷつりと切ってしまうのではなく、また新しい形での出会いへと変えて行きたい。
>ひろこ
2年間、イエローハウスのおかげで、自分のなかに渦巻いていたもやもやとした好奇心を行動や形に移してきた。下手くそでがむしゃらだったけれど、近隣住民の方々とも顔見知りになることができた。
今回、急ではあったけれど、お別れのワークショップの機会を作ったことで、イエローハウスに対して、太陽光に包まれるようなあたたかい気持ちが湧いた。企画したときは「なにかやったほうがいいだろう」くらいの気持ちだったので、これは想定外だった。
江戸時代の問屋街に流れる水路、戦争の瓦礫の山、戦後の経済成長のなかのハンコ屋さん、不景気なビル街のなかでひとりだけ真っ黄色なギャラリー。オリンピックを前に、また一時代の幕をおろすことになったこの地の未来が、明るいものでありますよう!
渡川が企画できるものとはだいぶ雰囲気が違うかもしれないけれど、何かしらの表現に触れられる集まりと交流は続けていきたいと思う。
人形町のあたりで場所を探し、少し助走をしてから、年内には再始動できれば嬉しい。
また、このウェブサイトでも活発に表現の交流をしていきたい!
>まいまい
いくみがイエローハウスと出会ったことで始まったとも言える"おどりのもり"。
ここを拠点として自分には縁のなかった街の人たちと繋がりを持つことができたことは、とても豊かな経験となった。そして、本当に"家"のように、いつもなんとも言えない居心地の良さがあった。
イエローハウスのように地域にとってもアーティストにとっても交流の場となりうるスペースが物理的になくなってしまうのは寂しいが、また別の場所に、別の形で、イエローハウスのような場が生まれることを願う。
おどりのもりプロジェクトは新体制となり、メンバーそれぞれの居住地や生活環境等も変化するが、根底の部分にある芸術と生活への探究心や、表現することへの興味などは変わらないので、今後もそれらをシェアし、実験や研究を重ねたい。
長期的な大きなプロジェクトに取り組むことは難しくとも、短期的で小さな実験(それをワークショップとして参加者(仲間)を募り行うなどは現実的で私たち自身も楽しめるのではないかと思う。
目的やゴールを限定せず、私たちにできる形で、そして一人でも多くの同志を見つけながら活動してゆきたい。
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