感覚をおどらせよう。
せかいに感動しよう。
だれもがうまれたときからアーティスト。
かんじるこころ。
つながるきもち。
おどるからだは未来とつながっている。
明日へのたねは、そこにある。

 

 ー生まれたての赤ちゃんとも、ことばのちがう国の人とも、道ばたを歩くありんこや空とぶ鳥たちとも、そしてこれから出会う人たちとも、その瞬間、心をひとつにできるのが 、“おどり” です。ー

(プロジェクトリーダー 渡川 いくみ/2017.6)

 "おどり"はダンスが上手な人だけのものではありません。豪華なステージがなければできないなんてこともありません。《おどりのもり》では「自分のからだに立ち返る機会」をつくります。絵からダンス、ダンスから音楽、そこから言葉、あるいは光へ、というふうに、複数の表現方法を横断し、次々と展開するワークショップを企画しています。からだ本意の感覚と動きをゆるし、コミュニケーションの術の1つとしてアートを楽しむ場を作りたいと考えているからです。

 これは、小さな子どもだけの話ではありません。様々な環境下にある人たち同士が、「人と人」という次元に立ち返って接することが、わたしたちの未来にとって大切だと思うからです。《おどりのもり》では、おとなのためのダンスのワークショップの時間もつくることで、後回しにしがちな自分のからだの声に、そして他者のからだの声に、おとな自身が耳を傾ける場を確保しています。

 どんなに小さな世界だとしてでも、"生まれ持ったからだがその世界に感動する瞬間"を、私たちは"おどり"と呼んでいます。

どうしていま、"おどり"なの?
"もり"ってどういうこと?

 《おどりのもり》では2つの観点から、"森"のように長く継続していける創造性を育むことを目標にしています。

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1、内側に広がっていく"森"=自身を育てる未来:

  「どうしていま、おどりなの?」にも書いたように、年齢や経験に関わらず自分自身のもつ多様な感性に気付くことが、長期継続的に豊かな日常生活を送ること=生きることにつながると考えています。プロジェクトに関わるアーティストや専門家にとっても各々の研究分野をより深淵なものにするための手立てとなることを願っています。

2、外側に広がっていく"森"=他者とつくる未来:

  町に広場のような開放的で歓迎の態度がある場を作ります。そのためにプログラムの時間外での対話も大事にし、日常生活の行動範囲のなかで気軽に立ち寄れるような空間を作ることも意識しています。固定的な施設をオープンするという話ではありません。どんなに小さなスペースにも森は作れます。《おどりのもり》は今すぐに大きな成果を数字で出すことに関心がありません。むしろ、徐々に染み込んでいったり、ゆっくりと変化したりする生活に寄り添う技術を磨きたいと考えています。なぜなら、学校や職場とは違う、年齢や能力にかかわらない枠組みで人々が過ごす場を持つような共同体とはどのように創出可能で、持続可能なのかという問いに関心があるからです。言い換えれば、制度からどうしても漏れ落ちる、個人的なこととして軽視されがちな生きづらさを、アートはどんなふうにキャッチすることができるのかを問い続けたいと考えています。

どんな観点をもっているの?

 《おどりのもり》の活動には3つの観点があります。

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1、教育…ティーム・ティーチングの姿勢:

  ティーム・ティーチングとは複数人で教授する体制のことです。《おどりのもり》に関わるメンバーは、複数の専門性を持ち(美術、教育、演劇、ダンス、演奏、作曲、写真、デザインなど)またその専門性を部分的に重ねています。その体制によって、学校教育の内側では実践できないような創造的なプログラムを生み出しています。様々な視点から子どもひとりひとりに潜在する創造力を引き出し、アーティストと研究者、子どもを育てる生活者が一緒になって豊かな未来を育んでいくことを目指しています。

2、地域振興…住むひとの視点で町をみつめる姿勢

  現在は主にイエローハウスという、東日本橋にある黄色い外観のギャラリーでイベントを行っています。開催するにあたって重要なのは、会場の運営者との連携です。イエローハウスの運営者である三浦一崇さんと、ギャラリーを町の人のためにひらいていくという課題をしっかりと共有し、企画会議や反省会をともに行っています。

 また、さんぽ企画(2017.10/2018.1)のように、特定のテーマに沿って町歩きをすることで、その町の新たな魅力を生活者自身に発見してもらおうという試みも行っています。

3、創造性…新しい価値を生み出そうとする姿勢

  芸術分野と教育分野を中心に多様な専門性が出会う場でもあります。今ある価値を疑ってみたり、新しいことを実験したりします。すでに答えのはっきりしているワークショップを行うことには興味がありません。むしろ、今いる人とその環境で何が出来るのかを考え続けることが、そこに生きる人自身にとって真に価値のあることだと考えています。アーティストや専門家にとっても、新しい道を切り開く機会になることを期待しています。《おどりのもり》は専門家とアーティストさらに生活者が出会うプラットホームとして機能することを目指しています。

どんな人たちがやっているの?

 《おどりのもり》は、渡川いくみのアイデアと、イエローハウスの運営者・三浦一崇さんとの会話によって始まった活動です。渡川は美術教員として学校教育に携わりつつ、表現者としても創作活動を行いながら、美術と合わせてもっと多様な体の感性を生かすことができるような場のあり方を模索しています。

 しかし、たったひとりで進めているわけではありません。自らは企画・実行の中心的なファシリテーターとなって、アーティストや専門家たちとゆるやかなチーム体制を作っています。

どんなことをしているの?

《おどりのもりPROJECT》は、2017年6月より活動を開始し、現在は東日本橋の地域の住人の方々や、一時滞在の方を対象に、多様な人々が安心できる広場のような場所を意識して、アートに関連した活動を継続的に行っています。

活動内容は大きく分けて3つあります。

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1、イベント=「森」

  アーティストや研究者、参加者の方と連携して、ワークショップやエキシビションを開催します。

2、ドキュメンテーション=「実り」

  リサーチからイベント開催までの過程、イベントでの気付きを振り返り、記録を残します。それらを丁寧に見つめ、未来への種とします。参加者や共有するために、冊子などの記録物を作成します。

3、リサーチ&ダイアローグ=「種」

  関心の対象について事前に調べたり、住人の方に話を聞くなどしてその地域の様子や生活リズムについて把握したりします。

この3つをサイクルのようにして取り組みことで、創造性を失わずに長く続けていくことを目指しています。

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「森」として位置づけている《おどりのもり》のイベントは、短期のものから長期のものまであります。毎度少人数で行い、大人も子どもも、ひとりひとりを大切にできる場づくりを心がけています。

 A「定期プログラム」ーからだのじかんー

  …月1〜2回、60〜90分程度で、からだをほぐしからだで表現することを主にしたプログラムを年間通じて行います。生きること/表現することの資本となる"からだ"に日常的に目を向け、その変化に対する気付きの機会をつくります。【主な内容:ストレッチ/親子体操/音楽・リズム表現/イメージドローイング/振付創作ほか】

 B「短期プログラム」

 …週末2日間に、テーマのある一回性のプログラムを行います(隔月開催)。絵、ダンス、音、ことば、光…というように様々な意識の方向からアプローチを展開させ、専門的な内容も織り交ぜながら、参加者の感性や創造性を引き出し、1つのプログラムを完成させていきます。

 C「長期プログラム」

 …夏休みなどを利用して、2週間程度に渡るプログラムを行います。じっくりと時間をかけて創造性を働かせる機会を作り、また参加者が外に向けて発表する機会を設け、来場者に対してその取り組みや発想が広がっていくようにします。第1週目にワークショップ、第2週目に展覧会、最終日にパフォーマンス発表を行うなど、より展開のある内容で構成します。また、時間をゆるやかに設定することで、気軽に創作を始められる環境をつくるねらいもあります。

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「実り」として位置づけている記録物の作成も、手に取ってほしい人々を意識して、3つの方向で計画しています。

1、ワークブック

 …参加者や活動内容に興味のある人が各ワークショップの内容を家庭等で追体験できるもの。

2、記録ブック

 …保護者や教員、アーティストなど、立場や分野を横断して共に話すことを可能にするために、ワークショップの過程・内容・成果を整理したもの。未来への種として残す・伝えるということに重点を置く。

3、「おどりのもり」ノウハウ本

 …活動に興味のあるひとのあいだで意見交換を活発化させるために、企画に参加したメンバーの考えや経験を文章にまとめたもの。見せることよりも、残すことに重点を置く。

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「種」として、地域の方々との出会い、その土地の歴史や物語、また企画内容に関わるテーマについての調べものを積極的に行っています。企画のメンバーはそれぞれの専門性を生かしながら参加していますが、その一方で生活者としての目線に立ち返り、その中から次のワークショップのテーマや内容を生み出していくことを大切にしています。

これまでどんなことをやってきたの?

 2017年の夏から始まった《おどりのもり》は、小規模ではありながら、通りすがりの住人の方々がこのプログラムを知って、都合をつけてワークショップに参加してくださることもあり、生活圏に馴染むことの大切さに気付かされました。

 感性を刺激し、生活について豊かな気付きを得られるような場には、のびのびとできることと安心できることが重要です。どんなときにのびのびできるか、安心できるかは、人によって様々なため、《おどりのもり》でも試行錯誤を続けています。小さなお子さん、小学生、そして保護者の方々など、立場が違い、感性が多様であることを大事にしながら共に活動していけるように、参加者の人数、参加費、ワークショップの内容を工夫しながら開催しているところです。